中馬(ちゅうま)

江戸時代、信州の農民が行った馬の背を利用した荷物輸送業のこと。17世紀、伊那地方の農民が農閑期の副業として数頭の手持ちの馬で物資を目的地まで運送したのに始まる。18世紀初めには活動範囲は広がり、重要な陸上輸送手段となった。輸送物資は米、大豆、たばこなどを移出、茶、塩、味噌、蚕繭などを移入した。中馬は一人で数匹の馬をひき、途中での荷物の積み替えなしに、物資を目的地まで直送したので、その隆盛につれて、宿場で継ぎ送りをしていた宿場問屋側と荷物の争奪戦が生じ、対立した。延宝元(1764)年には、いったん幕府により公認されたが、18世紀中頃に再び紛争が生じた。明和元(1764)年幕府の裁許により完全に公認されたが、明治時代になって衰退した。

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